« 2009年10月 | トップページ | 2009年12月 »

2009/11/30

新型インフルエンザ・ワクチンと木村盛世さん(改訂版)

 民主主義の成熟のプロセスとして、国家公務員の組織の内部から堂々と現政権に対する改善提案なり、所属する組織の活動に対する批判なりが、公開され、発言者の身分がしっかりと保障されていくことが大切なのではなかろうか。もちろん、国家公務員が発表した意見は、国会の場や国民的議論の中で、その妥当性が検証される必要があると思う。いわゆる「内部告発」問題の一現象形態を考えたい。

 そのように改めて考えたのは、2009年11月28日放送のテレビ朝日「朝まで生テレビ」に出演した厚生労働省の医系技官(医師)の女性、木村盛世(きむら・もりよ)さんの発言を聞いたからである。木村さんは、国会へ参考人招致もされているし、メディアへの「露出」も多い方だから、ご存じの方もいると思う。しかし、アドルノ的筆者は、迂闊なことに、この方の意見を知らなかった。誠に恥ずかしい。

 木村さんは、感染症疫学が専門であり、『厚生労働省崩壊』(講談社)という著作を世に問い、いま目の前で進行している新型インフルエンザに対する厚生労働省の大失態を真正面から批判している旬の人である。番組で木村さんは、民主党の細野豪志副幹事長から、厚生労働省の職員として「社長」にあたる長妻昭厚労相を批判するのは「いかがなものか」的な脅しの言葉にさらされていた。今後、民主党政権からいじわるされたり、干されないか心配である。

 以下、「朝生」での木村さんの発言の主なものを記してみよう。司会の田原聡一朗氏とのやりとり付きの大サーヴィス。とはいえ、深夜放送を見ているうちに、高鼾(危ないぞ!)をかいて寝てしまったので、録画による視聴にもとづいている。

 木村 あの、もちろん厚生労働省はひどいですし、そのなかでも医系技官の人たちは、とくにヒドイと思います。…わたくしは、果たして民主党は官僚から脱依存ができるのか、はなはだ疑問だと思います。

 田原 その疑問、言ってください。なぜ?

 木村 わたくしの(所属している)所は、厚生労働省という所でございますが、長妻大臣という非常に優秀な大臣がいます。でも、彼は間違いなく、いま、ストックホルム症候群状態ですね。医系技官に丸め込まれてしまって、官僚の言うがままに動いているじゃないですか。

 田原 ホントにダメなの?

 木村 いや、ダメなのというわけではなくて、24時間、実際に、長妻さん、民主党の方々は、官僚の恐ろしさを知らないんですよ。いじわるさを、ね。ほんとうの陰険さを知らないんですよ。ほんとうに、もう、顔では笑って「大臣だけを」という顔をしながら平気で裏切って、新聞記者にリークし、党3役(政務3役の間違いか?)に責任をおしつけりゃいいんだからね、というのが官僚なんですよ。それを知らずに言っちゃったものだから、うまい具合に丸め込まれちゃった。その最たるものが医療費削減。もう一つはいまワクチンのことですよ。

 田原 どんなワクチン、言って。

 木村 新型インフルエンザ・ワクチンね。実際、この間もグラクソ、GSK(グラクソ・スミス・クライン)のワクチンの副反応でかなり騒がれましたね。実際に調べて見ますと、国産(ワクチン)を擁護するために、国外メーカーのワクチンが非常に危険だということを(厚労省が)いわゆるリークをしたわけですよ。

 田原 国外の方が危険じゃないの?

 木村 ワクチンは必ず副反応があります。じゃあ、GSKのワクチンというのは、たまたまロットの不具合があったために自己回収したんですよ。リコールして、6人のアナフィラキシー・ショック(手塚治虫の「ブラック・ジャック」を読んでいるとすんなり理解できる―アドルノ的筆者)が起こったけれども、その中では死んでいなかったんですね。実際に、平成21年度のね、新型インフルエンザ予防接種後副反応検討会というのがなされているんですよ。これはかの有名な上田健康局長の私的諮問委員会というかたちで開かれているんですけれども、そこに、もう恐るべき事実が(書いて)あってですね。

 田原 なんて書いてあるの? 
 
 木村 国産ワクチンでは、(新型インフルエンザの患者が)もう死んでいるんですよ。

 田原 えっ!?

 木村 副反応で亡くなっている方がいらっしゃって、かなり因果関係が、まあ、濃厚だという方がいらっしゃるにもかかわらず。それ自体はしようがないことだと思うんですよ、ワクチンには必ず副反応があるから。それなのに、なぜ、国外だけは危険で、国産は安全だということを言いつづけるのか。

 田原 (国産ワクチンで)死んでることは、一切公表していないんですか?

 木村 公表していないですよ。もう国産は安全だ、安全だといってますからね。

 田原 (厚労省の)ウソだ。

 木村 なおかつ、これのやり方というのは、いわゆるハンセン病だったり、薬害エイズの問題だったり、薬害肝炎の問題だったり、すべて同じやり方じゃないですか。

 田原 それに対して大臣はなんて言ってるの?

 木村 何も言っていないじゃないですか。

 細野豪志(民主党副幹事長) 木村さんが、このワクチンの分野の専門家で、それについていろいろ意見を言われるのはいいと思いますね。ただ、長妻大臣が、あたかも、なんか役所に完全に篭絡されたような言い方をされたけれども、じゃあ、木村さんはどれぐらい長妻大臣と話をされていて、どういう判断をそれぞれのことについて総合的にやっているのかって、ご存じなんですか?
 
 木村 わたくしは、ですね…、わたくしは長妻さんに…

 細野 ご存じのうえで、まあ、言うなれば、社長の悪口を言ってらっしゃるわけですね。

 木村 悪口ではなくて…。

 高橋洋一・元財務省・内閣府参事官 ふふふふふふっ、うふふふふふふっ。

 細野 そこはね、ちゃんと把握して言っておられるなら、それはね、堂々とわれわれに文句を言ってくださっても。

 木村 そうですか。

 細野 もし、仮にね、大臣と接点がほとんどなくて、わかっていらっしゃらなくて、おっしゃっているんだったら、政治的には大問題ですよ。

 木村 というかですね、わたくしは大臣に会いたかったし、会おうとも努力したけど、会えないということ自体がおかしいことです。

 大塚耕平・内閣府副大臣 いや、だけど、それは大勢いるから難しいので。

 木村 大勢いるから難しいって言ったって、やっぱり、これだけ医療問題っていうのが危機的状況なんだし、そのときに、やはり、これだけ声を出していろんなところから話をしている人に…。

 田原 ちょっと待って。

 木村 うん?

 田原 具体的に、その(咳払い)、木村さんは、会ってなんて言いたかったの? 長妻さんに。

 木村 長妻さんに「もう目を覚まして」って(笑)。

 田原 ちょっと、目を覚まして、ねえ、何がわかるんだって。

 木村 いや、それはですね、国民…。いまね、医療っていうのは危機的状況にあり、もう、あのー、医療崩壊も進み、なおかつですね、これから新型インフルエンザ…。 

 田原 ちょっと待って。医療が危機的状況にあるとか、医療崩壊が進むってのは、わかんないの。そういう漠然とした話じゃ。

 木村 いま、開業医は、もう倒れる寸前ですよ。開業医もそれから勤務医も。

 田原 それじゃあ、具体的なこと、聞きましょうか。今度、医療の問題で、開業医と勤務医の格差が大きいと。ね。格差が大きい。確かに、開業医は年間いくら。2千何百万?

 木村 開業医が2千何百万て数字が出てますね。

 田原 いや、ちょっと、あーた、厚労省なんだから、こんなん答えてもらわなきゃダメだ。僕が言う。開業医が2700万円ぐらいなのよ。勤務医が1400万円ぐらいなのよね、年収が。それで格差をなくすためにどうするかっていうと、どうも開業医の収入を減らすといっているんだよ。ですよね、中野(雅至・兵庫県立大学大学院准教授、元厚労省官僚)さん。

 中野 そうです。長妻さんのことで一言いいですか。

 田原 はい。

 中野 僕が聞いている範囲内では、長妻さんは取り込まれていない。むしろ、役人はやりにくいって言っています。

 田原 どうぞどうぞ、もっと言って。

 中野 長妻大臣にいじめられている。

 田原 どういうふうにいじめられている?

 中野 やっぱ、厳しいですよね。目標設定させたりとか、ちゃんと成果をもってこいとか。

 田原 事業仕分けとも関係あんだけど、さっき僕が言いたかったのは、医療費という枠があるから、その枠の中で勤務医と開業医の開きが大きすぎるから、勤務医を上げたい。上げんのはいいですよ、その分、開業医を下げるというのはどういうこと?

 中野 もともと旧厚生省は、日本医師会に対して非常に怨念があるわけです。下げたいんです、彼ら(厚労省)だって。
 
 田原 なんで?

 中野 日本医師会にどんどんやられていた訳です。いままで日本医師会に逆らった人は出世しなかったんですから。

 田原 ちょっと待って。やられたってどういうことよ?

 中野 社会保険庁長官になった人の中には、ほんとうは事務次官になれたのに、医師会と喧嘩したがために、社会保険庁に飛ばされたとか、そういう人いっぱいいる訳です。もともと厚生官僚の中にも、医師会と自民党の(厚生)族に対して反感をもっていた人はいっぱいいる筈です。はい。

 田原 はい、どうぞ。

 小池晃(日本共産党政策委員長・参院議員) あのね、そういう面はあると思うんだけど、この間、医療現場は本当に疲弊してて、産科、小児科、救急の危機だと言われていて、民主党は選挙で一つの大きな争点にしたし、診療報酬は引き上げるんだといろんな場所で言ってきた訳ですよ。それは医者の収入を増やすというのではなくて、いまの医療体制を立て直すのが国の大事な仕事なんだと言ってきた。で、最初は長妻さんも、かなりそういう部分があったんだけども、私も実際、厚生労働委員会で直接やりとりしているんだけど、事業仕分けで、かなりこれ(診療報酬)が叩かれて、財務省も下げるんだと言い出し始めてますよね。

 田原 そう。

 小池 そういうなかで、長妻さんもトーン変わってきてますよ。あの事業仕分けについて、医療の分野なんかで言うと、開業医が勤務医の(収入の)1・7倍というさっきの数字なんかは、これは財務省が全部つくったデータなんですね。これはかなり恣意的なデータなんですよ、実は。開業医といっても、収入じゃないから。事業全体のものだから、それがあたかも月収であるかのように…

 大塚 小池さんね、診療報酬については、私もトータルとしては上げた方がいいと思っているんですよ。

 小池 変わってきてるじゃないですか。

 大塚 ただ、長妻さんがどうだかというのは、直接本人に聞いてみないとわかんないんで、欠席裁判はぜひ勘弁してやってほしいんですね。診療報酬は僕も上げた方がいいと思っているんだけど。私も初当選以来、マニアックに診療報酬(の問題)をやってきた口なんですよ。分析とか追及を。実は、診療報酬の中はですね、全然、積算されていないんですね。全部で1万5000ぐらいの項目に、早い話、価格をつけているんですけども、どれをどういうふうに上げたら、トータルとして医療費が全体でマイナス2・7になるとか、マイナス1・3になるとか。最初は、8年前に私が初めて聞いたときには、チャンと積算しているというのが厚生労働省の説明だった。つまり、1個1個でいくらになるから、トータルで何兆円になるという。ところが、(医療予算の)初めてのマイナス改定のときに、積算しているんだったら、全部資料を見せてくれと現場に乗り込んだら、積算していないことがわかった。

 田原 えっ!? 積算してないの?

 大塚 積算していないんです。まったく。だから、診療報酬をどういうふうに改定したら、医療費が実際にどうなるかなんてことは、誰もわからないままに、数字だけが一人歩きしているんです。

 田原 厚生労働省もやっていない?

 大塚 積算してません。

 田原 ちょっと、中野さん、どう思う?

 中野 やっていないというか、中医協(中央社会保険医療協議会)で決めている訳です。

 大塚 決めているだけです。

 中野 政治そのものなんですよ、診療報酬っていうのは。別に診療報酬の分野だけじゃなくて、日本の役人の特徴なんですけど、賢そうに見えて、割かし科学的な行政をやっていない訳です。科学的にいろんな数字を計算をしていない。割かし、いい加減にやっているところがある訳です。

 田原 科学なんてもんじゃない。計算していないだけじゃない。

 細野 中医協のメンバーを長妻大臣は変えたんです。これまでは個人の診療所の先生が3人、病院が2人だったのを、今度は病院の方が大事だからということで、まあ、診療所も大事なんだけど、病院が厳しいということで3人にしたんです。これなんかは、明確に政治的な意思を示した訳です。小池さんがおっしゃった「(診療報酬を)削っている」というのは、補正予算でとにかく、とりあえず貯めておきましょうとか、建物に入れましょうというやり方ではなくて、医療本体に(予算を)つけるために来年度の本予算でしっかりやりましょうという大方針がある訳です。もちろん、年末から財務省からいろいろな横槍も入るでしょうけど、私は長妻大臣は頑張っていると思いますよ。

 小池 (事業仕分けでは)救急(医療)の基金なんかは、結構、大胆に削ってますよ。

 (中略)

 田原 長妻大臣と舛添大臣を比べると、舛添さんの方がマシだった?

 木村 それはすごく難しいことですよね。

 田原 それを言わないとわからない。

 木村 ただ、一つだけ言いたいのは、舛添さんがやった画期的なことというのは、厚労省改革というのは医系技官改革だと言ったんですよ。なんでかというと、医系技官は悪の巣だから。

 田原 あーたは、悪の巣の中にいるわけ?

 木村 そうです。悪の巣の中にいるんです。悪の巣の中で、声を上げているから、ま、こういうことにもなるんですけれども。

 田原 こういうことというのは?

 木村 こういうことになって、ここ(朝まで生テレビ)に来るんですね。あははははは。

(この後、まだ1時間半弱、議論が続くのだが、この辺にしておきましょう)

| コメント (0) | トラックバック (0)

2009/11/15

日本の不思議な役人

 疾患のない子どもに対する新型インフルエンザの予防接種が、11月14日から大阪で始まった。当初、12月からとされていたものを前倒しして、全国トップを切って実施したものらしい。厚生労働省の指導というが、遅いのではないか。
 
 厚生労働省という所は、薬害エイズにしても、薬害肝炎にしても、亡くなる人が出て、患者が運動を起こしてからようやく腰を起こす。省庁の中でもダメな側面が目立つ。行政刷新会議での厚生労働省の課長級の職員の受け答えを聞いても、「それは中医協にお伝えします」とか、無責任な対応が目立つ。本質的に診療報酬の予算減を否定していない。

 驚いたのは、「評価者」(事業仕分け人)から「救急車の有料化」について意見を求められて、「それは消防庁に伝えます」と厚生労働省の役人が答えたことだ。消防庁によるアンケート調査で、救急車の安易な利用が少ないという結果が出ていると述べておきながら、である。救急車が有料化されたら、貧乏人は利用できなくなるのは必定である。地獄の沙汰もカネ次第。

 日本の不思議な役人よ! 主権者は国民である。あなたたちに、一部政党が主導する行政刷新会議の場で、そんな受け答えができる筋合いはないのである。

| コメント (0) | トラックバック (1)

棋士、恐るべし

 囲碁や将棋の棋士の言葉には、弁証法を示す言葉が含まれていて、とても勉強になる。

 将棋の升田幸三は数々の名言を残している。

 例えば、「着眼大局、着手小局」。

 哲学者の古在由重がこの宇宙的というか、物理的な言葉に反応して、あるエッセイを書いた。ここでは、あえて紹介しない。

 また、升田は30歳の時に次のような言葉を書いた。

 「私の考えでは自己を克服するということは真理と対決することだと思う」

 「『勝負の鬼』よりも将棋の本質に徹し、一歩でも真理に近づけばその方が本当に強いはずだ。それは『勝負の鬼』に対して『将棋の鬼』とでもいいたい」

 梅田望夫著『シリコンバレーから将棋を観る』という本によって、升田の言葉に出会えた。

 升田が書き残した文字は、マルクスの言葉かヘーゲルの言葉のように響く。

 おそらく、囲碁の世界では、藤沢秀行(シューコー先生を呼び捨てにするのはオコガマシイ。が、評論の世界は呼び捨て中心主義なので致し方ない)の数々の名言があるだろう。これも、ここではあえて紹介しない(というよりも勉強中)。

 勝負師と研究者と芸術家という三位一体の存在としての「棋士」。恐るべし。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2009/11/14

13日の金曜日

 オバマ米大統領の来日(13日の金曜日)で、東京の自動車交通は不便この上ない(たまたま路上に出た時間が悪かったのかもしれないが)。「地獄さ行ぐんだで」である。ハトヤマ首相と2050年までに温室効果ガス排出量を1990年比で80%削減する約束をした。それは歓迎するが、すでに日本の自動車業界にとっては織り込み済みのことで、とりたてて目新しい訳ではないのである。

 もはや旧聞に属するが、千葉・幕張メッセで開かれた「第41回東京モーターショー2009」で、日産自動車は2050年までに温室効果ガス排出量を90%削減する目標を提示した(ただし2000年の自社製品比)。日産の担当者によると、トヨタ自動車や三菱自動車も表に数値目標は出さないものの、削減目標はもっているとのことだった。マツダの担当者から話を聞くことができたが、ハトヤマ首相が国連でCO2削減をぶち上げたものの、具体的中身がはっきりしないため、数値目標の発表は控えているとのことだった。東京モーターショーが日米首脳会談の前だったということもあり、今後、日本の自動車企業は何らかのかたちで数値目標を発表することになるだろう。

 今回のオバマ・ハトヤマ「CO2削減」合意の裏にあるのは、来年からの電気自動車の販売促進である。植林など緑地化の推進にも、もっと尽力してほしいところだが、政治家や財界の念頭にあるのは、日本産、アメリカ産の電気自動車が縦横無尽に走りまわる2050年未来図なのだ。

 ここからは余談。それにしても今回の東京モーターショーは、低調だった。タクシーの運転手さんが嘆いていた。「こんなのは初めてだ」と。つまり、見物人が例年に比べて著しく少なかった。海外の自動車企業はBMWアルピナ、ロータス。2輪車ではハーレーダビッドソン、台湾のキムコ、イタリアのアディバ。カナダの3輪車のBRPぐらいしか参加していない。アメリカの自動車会社は完全撤退である(米軍基地は完全撤退してほしいが、アメ車は見たい。日本で国産車を見せられても、ただのショールームである)。寂しい。しかもアドルノ的筆者が見に行った日は、ガラガラで寒かった。

 最悪なことに、どしゃぶりの雨の日で、焼きそばも売れず、通常300円(250円?)で販売のところ、100円に販売価格が暴落していた。貧乏人には幸いだった(しかし、販売員の方の人件費を考えると本当は喜んではいけない。また、消費者物価の下落を理由に医師の診療報酬を引き下げてもいいのではないかと主張する土居丈朗慶応義塾大学教授みたいな人物もいる。こんな意見を振りまいたら、ただでさえ人数が少ない医師がさらに減るかもしれない。賃下げを促す典型的な新自由主義経済学のドグマである)。

 冷たいベンチに座り、天井の隙間から落ちてくる雨雫を見ながら、硬い麺に染み込んだソースの味を舌で転がしながら食べていると、同じような所作、風体の人が2、3人いたので、そこはかとない連帯感を感じた。内部留保をためこんで本当は裕福のはずのトヨタ自動車のパンフレットがなぜ、他の企業に比べてショボイのかについて、あれこれと勝手な推理をしながら、やはり値引きされた鳥のから揚げを平らげた(消化の悪い食べ方である)。

 現代資本主義の象徴的商品=車をめぐる産業は、明らかに衰退傾向にある(ように思わされている)。タクシーの運転手さんが乗せた客の話によると「中国(上海?)で開かれたモーターショーの方が多くの企業が集まっていた」という。しかし、三菱、富士重工に続いて、日産が世界初の量産型の電気自動車を2010年10月か11月ごろから大々的に販売する勢いで、自動車産業界は産業構造の変化、技術革新の大波の中にいる。これからは電気自動車に使用されるリチウムイオン電池の時代なのだ。歴史学の時代区分も「リチウム時代」という括り方ができるかもしれない。
  
 自動車用電池メーカーの人に話を聞くと、当面、リチウム電池に代わる電池はないという。電気自動車の電池は、交換するとき、リチウム電池が多数入ったケースを丸ごと取り替えることになるので、需要が高まる。とにかく電気自動車用の充電器と電池を製造する電機メーカーの笑いが止まらない日々が、すぐそこに迫っているのである。庶民は、地デジ化によるテレビの買い替えと、電気自動車への乗り換えを煽られる。今はお寒い状況を演じている自動車産業界が虎視眈々と起死回生を狙っているのである。

 自動車部品メーカーも驚くべき技術を生み出している。自動車企業で働いていた派遣労働者は、強烈な搾取構造の下で、素晴らしい技術を支えていたのである。そういうスゴイ人たちを正社員にしない企業は、異常である。

 もちろん、東京モーターショー名物の、カメラ小僧たちがコンパニオンの女性を写そうと群がる姿は例年の通りだった。が、そのコンパニオンすら映像化(なんとコンパニオンの姿形をそのまま薄い板のパネルにして、そこに映像を投影する)されていたブースがあった。なんたる人件費の節約! なんたる人間への侮辱! まあ、ただの助平な男の妄想かもしれないが、人間の欲望が如実なまでに具現化された商品=自動車には、コンパニオンという別な欲望の対象が伴う。むしろ、(彼女を車に乗せてドライブという)消費者の購買意欲をそそろうとする自動車企業の長年の宣伝戦略の一環にすぎないのかもしれないが…。

 千葉で開かれているのに「東京モーターショー」、千葉にあるのに「東京ディズニーランド」、千葉のさらに辺鄙なところにあるのに「東京ドイツ村」「新東京国際空港(成田空港)」。東京の植民地=千葉の悲しさよ。怒れる者よ、立ち上がろう。もう一回。

| コメント (0) | トラックバック (1)

2009/11/10

新型インフルは「非常事態」だ

 新型インフルエンザをめぐり、非常事態宣言を出してもいいような事態になっている。にもかかわらず、新政権の動きは鈍い。国民全員にマスクの着用を一定期間、強制すべきだし、手洗い、うがいの励行も、今まで以上に求められている。

 2歳の幼児が亡くなったことに衝撃を受けていたが、愛知・犬山市で、基礎疾患のない7カ月の赤ちゃんが亡くなった。京都では1歳8カ月の幼児(乳児?)が亡くなっている。赤ちゃんは、生後6カ月の間は強力な免疫で守られているが、それ以降は免疫が弱まるという説(?)があるから、7カ月の赤ちゃんは、免疫が弱まった時期にあたる。お悔やみを申し上げたい。両親の悲しみは、想像を絶する。1歳8カ月の幼児は可愛い盛り。救えるはずの命を、なぜ救えないのか。人為的な政治災害というほかない。

 京都のある病院では、基礎疾患のある人たち、人工透析をしている人たちへの予防接種を「くじ引き」で選びはじめた。命は「くじ運」次第という訳である。厚生労働省や地方自治体が自分たちの責任を回避し、こういうことまで国民の「自己責任」にするところに、今の日本社会の特徴が如実に出ている。とても「文明」とはいえない。暗黒社会と表現した方がいい。

 何度も言うが、秋から流行するという予測は、専門家からなされていた。新型インフルエンザへの対応の遅さは、旧・自公政権にも責任がある。そして民主党政権の責任も問われる。

| コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年10月 | トップページ | 2009年12月 »